眠れぬ夜のことば紡ぎ

紡もえが、日記やエッセイを置いています。

結婚前夜

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1月10日、26歳になりました。明日、結婚します。 今の気持ちを残しておきたくて、久しぶりに自分のために筆を取ります。

 

新たな門出に対する緊張の気持ちとか、なんとなくさみしい気持ちとか、混ざり合った感情がじんわりと体の中をめぐっています。あんまり整理がついていなくて、これが「実感がわかない」って感じなのかもなあとか思ったりして。

これまで生きてきた人生は、気を遣わずに言っちゃうと結構大変でした。自分のことも人のことも全然思うように大事にできなかったし、何にも許せなかったし、いろんなことが悔しかった。私は母が19の時に初めて産んだ子で、小さい頃から、若い母に対する周囲の目線を感じてきました。若いんだから何もわからないとか。周囲が思う子育てを強いられて、母はとにかくいろんな人に気を遣っていたと思います。私は母が立派な母だということを証明したくて、周りの大人を自分の力で蹴っ飛ばしてやりたくて、完璧な人間を目指しました。周りに勝ちたい、というよりは、誰にもバカにされない人になりたくて。私は母の子育ての結果だから。

バカにされたら真正面から怒って、すぐにファイティングポーズをとってきました。ずいぶん難儀な性格です。病気などを経て少しやわらかくなった今も、相変わらずその傾向はあります。そんな私を見てけらけら笑ってくれるのが旦那さんです。

 

私は外界のいろんなもの(人の感情や悲しい事件など)に影響を受けやすく、ひとつひとつに深刻に悲しんだり怒ったりしてしまうのですが、彼はいつも横でケロっとしています。悲しんだり怒ったり百面相している私を笑い飛ばして。それはそれは楽しそうに笑うので、しばらくすると私もなんだかそんなに深刻じゃないかも、と思えてきて…。気づいたら、笑みがこぼれるくらい大丈夫になっています。

彼は私のあやし方が上手です。うつ病が重く、毎日床に伏して泣いていた私に、旅行先でお土産を買ってきてくれたことがありました。そっと開けた包みから出てきたのは、ものすごく泣いているシマエナガのガラス細工。彼は言いました。「こんなに、自分よりめちゃくちゃ泣いてる生きものがいたら、元気出るかなと思って」。たしかに、号泣のシマエナガは見ているとおかしくなってきて、「お~よしよし、どうした、大丈夫よ〜」と、自分の悲しみを忘れて慰めたくなってしまう。そうしているうちに大丈夫になっているんです。今でも辛い時は、シマエナガを慰めて元気を出す儀式をやっています。 

彼は、映画館で食べるキャラメルポップコーンの、一番甘くて美味しいところを見つけ出して私にくれる人です。 耐えられそうにないくらい怖いシーンが来たら、私の目に入る前に目隠しをしてくれる人です。 ほかほかのあんまんの一口目をくれる人です。これからもたぶん私は、たくさんのことを抱えて、何度も自分をやめてしまいたくなると思う。でも、ひとりで戦わなくてよくて。しゃがみこんだ背中を包み込んでくれる存在に、少しだけもたれかかることができるかもしれない。彼にもずっと安心してもたれかかってもらいたい。夫婦になることで、より一層安心して眠れるような気がしています。

 

自分の呪いを解くのを手伝ってもらっているカウンセラーさんに初めて「結婚します」と言ったとき、カウンセラーさんは安堵したように笑って、聞きました。「もえさんにとってお相手はどんな存在ですか」。私は「同志です」と答えました。相手の叶えたい夢のために、頑張れる環境を守っていく、後押ししていく。「大丈夫だよ」って伝え続ける。そんなことをしながら一緒に大人になってきたから。カウンセラーさんとの会話は彼には伝えてなかったけれど、彼はプロポーズのときに「あなた以上の同志にはこれからも出会えないと思う」と言ってくれました。ありがとう。私もそう思います。 これまでの恩は、全然返せていません。 これからもずっと返していきます。 にこにこの家族でいようね。

 

結婚が決まってから、大事な人たちにお礼を伝える日々を過ごしました。入籍前日の誕生日、12年前から私を知る親友が、手紙とプレゼントを贈ってくれました。小さい頃から顔を合わせる度にぶつかり合っていた叔父から、結婚祝いが届きました。

自分を遠くから、近くからみつめてくれている人たちの存在を、結婚という節目に際し改めて感じています。

「生まれてくれてありがとう」と言ってくれた彼と、みつめてくれる人たちを信じて、これからも生きていこうと思います。両親をはじめ、これまでの私を作ってくださった人への感謝と、「ずっと大好きだよ」の気持ちを抱きしめて、筆をおきます。

 

嬉しいときは喜びあって、悲しいときはゆっくり休んで。彼の手を放さず、歩いていけますように。

 

2022年1月10日 結婚前夜の紡もえ